■昨年6月に当サイトが報じた野村證券船橋支店の営業マンが関与した詐欺事件で、8月22日に詐欺容疑で逮捕・起訴された元社員・中村成治の判決が本日あり、神戸地裁は懲役6年の実刑判決を下した。神戸地裁の公判では、関係者の供述調書から、当サイトが報じた八千代市の男性から詐取した約7000万円のうち4700万円が、詐欺に加担した船橋支店の営業マンら2人に還流していたことが明らかになった。
■この事件は、野村證券元社員の中村が、退社後に起業したスーツ事業やウニ料理専門店で慢性的な赤字を出しながら、六本木界隈で「シャンパン王子」とも呼ばれるほどの豪遊・散財を続けていたことが発端。親族や大学の同級生、元同僚の野村証券社員からの借財も限界が来るようになり、野村證券の顧客への詐欺に手を出した。
■中村は、同期だった船橋支店の営業マンT(イニシャル)から紹介された、同支店営業マンS(同)に、騙されそうな顧客を紹介するよう依頼。その結果18年10月末、Sは担当顧客だった八千代市の男性に中村の詐欺話を持ち掛け、中村を紹介。男性顧客は退職金や相続財産のほぼ全てを詐取される被害に遭った。全国で被害者は約30人いるとされ、八千代市の男性と同様に、多くの顧客が野村證券の担当者から中村の紹介を受けていた。
■野村證券は事件後、八千代市の男性にSが中村を連れて男性の自宅を突然訪れたことは認めたものの、Sが詐欺商品への投資を勧誘していたことは否定し、自宅の訪問は「個別銘柄の勧誘のため」だったとする調査結果を伝えていた。しかし兵庫県警の捜査では、Sが中村の詐欺に加担していたことを自供していた。
■Sは中村に対し、八千代市の男性から引き出せそうな金額について、「マックス3500」と助言していた。実際、男性顧客が最初に支払ったのは3500万円で、中村はSの助言通りに詐欺を働いていたことが伺える。Sは自ら顧客の男性に中村の詐欺商品を勧め、18年10月から詐欺が発覚する19年2月までの数カ月間、男性の自宅に通いつめ投資資金の増額を勧めていた。野村證券が報告した事情とは、全く異なる。
■さらに、詐取金のうち大部分が、Sやその上司であるTに還流していたことが分かった。男性顧客は、10月末に3500万円、11月中頃に1500万円、12月初めに700万円、12月下旬に2600万円、翌年1月~2月までに660万円と断続的に金を詐取されていた(うち、約1320万円が返金されている ※一部訂正)。この中で、10月下旬の3500万円のうち2000万円、12月下旬の2600万円のうち1700万円の合計3700万円が、詐取後すぐにTに手渡されていた。Sに対しても、11月中頃に1500万円を詐取するのに前後して、合計1000万円が渡っていた。
■実は船橋支店のTやSは、八千代市の男性顧客が被害に遭う前に、中村に対して相当な金銭を貸し付けていた。中村の部下の供述によると、Tは10月9日に中村から、投資名目で資金を預かったが実は嘘で、全て費消してしまったことを打ち明けられていた。この日、船橋で中村、T、中村の部下の3者で会合がもたれ、他から資金を詐取して返済していくこととなったという。この点、Tは当初から詐取する目的でSに顧客の紹介を依頼しており、悪質の度合いが強い。
■一方、Sは当初、中村と男性顧客の取引に関与したことはないと嘘の供述をしていたが、後に関与を認めていた。だが「中村の案件を詐欺とは知らなかった」との主張は維持していた。だが、Sが中村を信じた理由として語られているのは、「クラブで毎晩何十万円も豪遊して儲かっていそうだ」「紹介してくれたTが野村證券の海外修練生に選ばれるエリートだった」というエピソードだけで、信憑性に欠ける。
■男性顧客は、SやT、野村證券を民事で提訴する予定で、刑事裁判で明かされなかった野村證券の責任が追及されることとなるだろう(つづく)。
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