東証一部・ナック、大赤字の住宅事業に不審点 費用の繰り延べによる28年3月期決算黒字化の疑惑


 

レオハウスはPRに「クレヨンしんちゃん」を起用(YouTubeより)
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創業者・西山由之と現会長・寺岡豊彦の内紛に揺れた東証一部ナック。今期の中間決算は売上高34,537百万円、営業利益△1,858百万円と減収・赤字幅拡大となった。足を引っ張っているのは戸建て販売のレオハウスなどの住宅事業である。セグメント売上高は13,388百万円(前期比△15.6%)、営業利益△2,214百万円。ナックは大赤字の理由を〈平成28年3月末時点における受注残高が前年同期比で減少したことや工事の完工・引渡しがずれ込んだこと〉と説明しているが、当サイトの見方では違う要因があったのではないかと思われる。前期中に発生した費用が当期に計上されているのではないか、という疑惑だ。
■過年度の住宅事業の推移をみると、上期に大きなマイナスを計上し、下期の特に第4四半期に利益が集中していることがわかる。四半期ごとの売上高と営業利益を見ると(単位は百万円)、27年3月期1Q:9,304・△440、2Q:11,267・57、3Q:9,711・44、4Q:13,852・727、で通期は44,134・388。28年3月期は1Q:5,501・△1,317、2Q:10,373・20、3Q:7,645・△418、4Q:13,933・1,303で通期は37,452・△412である。今期1Qは4,376・△1,543、2Qは9,012・△671と、例年とは違って第2四半期でも大きな赤字を計上した。
■このなかで特に業績が良かったのは28年3月期の4Qである。前年同期のレオハウス単体の売上と施工件数から平均単価を出すと、27年3月期4Qは2036万円、28年は1864万円で、△8.4%単価が下落しているのだが、住宅事業の営業利益率は5.25%から9.35%と上昇している(セグメントには㈱ジェイウッドも含まれているが、同社の施工件数は開示されておらず、同期間の売上高の規模はレオハウスの10%以下で影響は軽微だ)。前期はナック全体の当期純利益がわずか252百万円であったので、27年3月期4Qと同程度の利益水準ならば、最終赤字に転落していた。
■当サイトが信用調査会社等を通じて入手したレオハウスの損益計算書によると、同社の原価率は28年3月期80%、27年3月期80.7%、26年3月期78.3%となっている。ジェイウッドは27年3月期で76%であった。仮にレオハウスの原価率を80%、ジェイウッドの原価率を76%とすると、住宅事業の粗利は27年3月期4Qが2,785百万円、28年3月期4Qが2,817百万円となる。両第4四半期の営業利益の違いは販管費の多寡にある。上記原価率の前提に立った場合、27年3月期4Qは2,058百万円で、28年3月期4Qは1,514百万円計上された計算になる。
■販管費が5億円(25%)も削減されたのである。上記の原価率の仮定から推定される販管費の推移をみると(単位は百万円)、27年1Q:2,321、2Q:2,221、3Q:1,922、4Q:2,058、28年1Q:2,442、2Q:2,080、3Q:1,978、4Q:1,514、29年1Q:2,441、2Q:2,479、となり、他の会計期間と比較しても非常に少ないことがわかる。
■経常的に発生する固定費として、従業員給与、賃借料、減価償却費が挙げられる。ナックの有価証券報告書によると、平成27年3月期の住宅事業セグメントの従業員数は864人、賃借料は1,099百万円、減価償却費は821百万円である。28年3月期は843人、賃借料1,197百万円、減価償却費733百万円である。住宅事業の平均年収は定かではないが、複数の求人サイトなどを参照して年収350万円と仮定した場合、27年3月期は四半期ごとに1,236百万円、28年3月期は1,220百万円の固定費が計上されることになる。すると、販促費や経費に費やした金額は27年3月期4Qが822百万円に対して、28年3月期4Qは294百万円となる。これはあまりに過小すぎるのではないか。つまり、その後の当期の赤字額からして、前期中の費用が今期に繰り延べられている可能性がある。
■ナックの現経営陣にとって、28年3月期の赤字転落を阻止しなければならない理由はあった。前期末頃から表面化した創業者で大株主の西山由之による経営陣の糾弾である。5月に『日刊ゲンダイ』が報じて以降、西山が寺岡や現社長・吉村寛を解任する動きがないことから、両者はどこかの時期に“手打ち”をしたと考えられるが、前期の決算発表前後は緊張関係にあった。その時期に10年来で初めて最終赤字を計上したとなれば、寺岡のメンツは潰れ、解任は必至の状況となっていたはずだ。
■ナックは赤字を出している住宅事業以外にも、当サイトで過去にレポートしたクリクラ事業における生産過剰問題が存在している。
(文中敬称略)

会計期間 住宅事業売上高(百万) 住宅事業営業利益(百万) 想定粗利(百万) 想定販管費(百万) レオハウス施工件数(戸) レオハウス単価(万)
27年3月期1Q 9,304 △ 440 1,881 2,321 496 1,772
27年3月期2Q 11,267 57 2,278 2,221 572 1,862
27年3月期3Q 9,711 44 1,966 1,922 506 1,801
27年3月期4Q 13,852 727 2,785 2,058 662 2,036
28年3月期1Q 5,501 △ 1,317 1,125 2,442 254 1,918
28年3月期2Q 10,373 20 2,100 2,080 511 1,906
28年3月期3Q 7,645 △ 418 1,560 1,978 354 1,941
28年3月期4Q 13,933 1,303 2,817 1,514 707 1,864
29年3月期1Q 4,376 △ 1,543 898 2,441 204 1,871
29年3月期2Q 9,012 △ 671 1,808 2,479 406 2,183

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