ハコ企業の末路(4) インスパイアー事件の黒幕の金融ブローカー、融資金詐取で逮捕 銀行の杜撰融資の実態、浮き彫りに


■昨日、警視庁組織犯罪対策4課が、18年に破産した雑貨卸売「ラポール」の決算を粉飾し融資金を詐取した疑いで、金融ブローカー・黒木正博らを逮捕した。ラポール破産管財人の報告書等によると、黒木は共に逮捕された鈴木忍がラポールの代表に就任した2014年5月頃から同社を実効支配するようになり、15年5月から16年10月にかけて、十数の金融機関から約15億円を簿外で借入れ、一部を不正流用していたという。
■黒木らは、ラポールを手中に入れた同じ時期に、当時ジャスダックに上場していたインスパイアー㈱(15年10月破産)を実効支配し、増資で得た6億円の不正流用に関与していた。その手口については、昨年1月31日付の本連載で報じている。インスパイアーの破産管財人は、一連の取引は全て黒木が主導したと関連する訴訟で指摘していた。
■関係者によると、ラポールの決算書は合計七つあり、借入金の売上計上といった手口が用いられていたという。一部の金融機関はブローカーが仲介しており、「まずは支店長決済でお貸しできる一億円から」という具合で、名刺代わりに1億円を融資していた銀行もあったという。一般的に、インスパイアーのようなハコ企業と奇妙な取引をしている会社との取引は警戒するだろうが、ろくな審査もせずにラポールに貸したのが実情だった。
■今回の事件は、一介の金融ブローカーによる経済犯罪よりも、金融機関による杜撰融資の実態を浮き彫りにするだろう。そこで下記に、ラポールが破産した当時の銀行債権者リストを掲載する。

銀行名 取扱支店 債権額
常陽銀行 取手支店 211,649,000
東京スター銀行 本店 182,000,000
近畿産業信用組合 梅田支店 179,960,000
商工組合中央金庫 東京支店 151,932,000
北陸銀行 東京支店 125,120,000
福岡銀行 東京支店 98,610,000
静岡銀行 溝ノ口支店 84,997,000
政策金融公庫 本店 74,080,000
りそな銀行 渋谷支店 71,661,000
きらぼし銀行 八丁堀支店 64,580,000
三井住友銀行 堺支店 63,848,000
紀陽銀行 堺支店 63,348,000
みずほ銀行 堺支店 63,000,000
東日本銀行 浜松町支店 57,770,000
城南信用金庫 新橋支店 40,760,000
池田泉州銀行 堂島支店 20,831,000
大阪信用金庫 上福島支店 18,914,000

(文中敬称略)

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