【ミニ情報】詐欺的ソーシャルレンディング「JCサービス事件」、食い違う債権者間の思惑 売掛債権〝二重譲渡〟でトラブルも


■JCサービスを巡る最近の状況(当サイト作成)
■JCサービスを巡る最近の状況(当サイト作成)

■融資型クラウドファンディング(=ソーシャルレンディング)大手、maneoマーケットのプラットフォームを通じ約200億円もの資金を集めたが、ポンジスキームが露見し集めた資金の大半が債務不履行となっている㈱JCサービス(社長・中久保正巳)事件。今年3月、金融グループ「Jトラスト」の傘下に入ったmaneoマーケット㈱(社長・佐藤友彦)が、JCサービス子会社で資金集めを担っていたグリーンインフラレンディング(以下GIL)に破産を申立て、4月9日に東京地裁が破産手続開始決定を出した。一方のJCサービスは、債権者のベアハグが今年2月頃、大阪地裁に破産を申し立てる動きを見せたため、東京地裁が破産申立を受理する直前に民事再生を申請し、5月27日に裁判所が民事再生手続の開始決定を出した。
■maneoマーケットは破産申立のリリースで、GILの資料開示が不十分であり、JCサービスとの間で不正な取引があったと批判。一方JCサービスは〈拙速な判断に基づく新規ファンド募集の停止等により、投資家の皆様に対して多大な不利益を被らせてきた責任を、すべて当社らに転嫁すべくなされたものであり、投資家の皆様の利益を一切顧みないものであって、決して許されるものではございません〉と応酬している。
■JCサービスの資金源の大半はmaneoマーケットを通じて一般投資家から集めて資金であり、主要なGILに破産手続を求めているにも関わらず、なぜJCサービスは中久保による財産の管理処分権を認める民事再生に入ることができたのか。これには、GILとJCサービスの中間に位置する「エスクローファイナンス」(社長・須田幸生)の存在が大きい。
■JCサービスを巡るソーシャルレンディングの資金の流れを整理すると、maneoマーケットと通じて一般投資家は、JCサービスの太陽光発電所開発に11%~13%の利回りで投資するが、直接の相手方はGILとなる。GILは集めた資金をエスクローファイナンスに11%~13%の金利で融資し、エスクローファイナンスがサヤを抜いたうえでJCサービスに融資するという構図となる。エスクローファイナンスはJCサービスやmaneoマーケットとの資本関係は不明だが、中久保正巳やmaneo元オーナー・瀧本憲治が取締役に入っていた。
■このような構図であるため、一般投資家がJCサービスの実態解明をしたくとも、間にエスクローファイナンスが入っているため、直接破産を申し立てることはできない。民事再生に入るためには債権者の過半数の同意を得なければならないので、今回JCサービスはエスクローファイナンスと足並みを揃えていた可能性が高い。つまり資金源である一般投資家・maneoマーケットと、中間に挟まっているエスクローファイナンスの思惑が異なっていると思われる。
■こうした中、JCサービスの最近までの動向が明らかになってきた。当サイトは、2019年10月頃に作成されたと思しきJCサービスのバイオマス発電所開発権に関する文書を入手した。それによると、JCサービスは19年5月、都内の太陽光発電事業会社Xにバイオマス発電所開発権3件を合計63億円で売却し、この売掛債権を同年10月、B社(イニシャル)に譲渡。B社は同月、売掛債権のうち1.1億円分を1億円で別の太陽光発電事業会社Y社に譲渡している。
■B社とY社の債権譲渡契約には特約事項が定められており、もしX社から譲渡対象債権の弁済が受けられない場合、譲渡対象債権の金額が一カ月で5000万円ずつ増額するという仕組みとなっている。つまりY社からすれば、X社が代金を決済しないままだと、1億円で取得した債権の額が月5000万円ずつ増えていくというものだ。
■B社の業務執行社員は、JCサービスが手掛ける別の案件でも登場しており、中久保と関係が深い。JCサービスは福島県福島市松川町にて、60メガワットの大型太陽光発電所開発に取り組んでいた。JCサービスは18年12月に松川案件のIDをS社(イニシャル)に7億5000万円で譲渡しているが、その際のS社の業務執行社員はB社と同一人物だった。
■松川案件を巡る関係者間の債権債務は「乱脈」という表現が相応しい。JCサービスは19年9月に、港区のG社(イニシャル)にS社に対する上記のID譲渡債権を譲渡している。だがこの債権は19年8月にエスクローファイナンスに担保提供されていた。債権を〝二重譲渡〟することで金策を行っていた可能性が高い。中久保は今年4月入り、S社にG社に売掛金を振り込まないよう、文書で申し入れていた。このような実態がある中で、中久保に一定の権限を許す民事再生では、さらなる「二次被害」を生む恐れがあるのではないか。(文中敬称略、つづく)

2021年4月16日付:【ミニ情報】詐欺的ソーシャルレンディング「JCサービス事件」最終章 金商法違反容疑のバイオベンチャー「テラ事件」関係者に資金流出か

2018年12月19日付レポート【記事紹介】JCサービスの「細野豪志5000万円」問題で暗躍する大樹総研、菅義偉官房長官など政権中枢と昵懇 『FACTA』1月号

2018年10月9日付レポート:【続報】グリーンインフラレンディング親会社「JCサービス」に破産申立、太陽光発電所開発を巡る違約金などの債務不履行で(10/12 追記有)

2018年6月27日付レポート:【続報】『朝日新聞』報道の細野豪志元環境相「選挙資金5000万」受領、原資はグリーンインフラレンディング親会社「JCサービス」

2018年6月18日付レポート:【続報】グリーンインフラレンディング、親会社「JCサービス」未公開株を買戻し 「自己株式取得罪」に抵触か

2018年6月8日付レポート:【続報】グリーンインフラレンディング親会社「JCサービス」、太陽光発電所売買でトラブル 買主が「騙された」と告発

2018年5月21日付レポート:融資型クラウドファンディング大手「グリーンインフラレンディング」、償還資金を別ファンドで調達、自転車操業状態か

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